普段、あまり腹を立てることがない、いや、厳密に言うと腹を立てることはあるが、それを長く引きずることがない私。
そんな私が、珍しく腹立たしさを長く引きずった話である。
事象(少し、私の主観も混じっている):
透析クリニックの医師が、新型コロナの時期(緊急事態宣言が出されたころ)に、マスクをしないで回診に来ていた。
もともと「頑固じじぃ」(と私が思っている)なので、何か理由があってしていないのだろうとは予想していた。
それからの会話
私「先生はマスクをしないのですか?」
医「しない」
私「どうしてですか?」
医「マスクをしたら100%感染を防げるということが証明されていないから。」
私「それでも、患者が不安に感じているのだから、それを無くすということだけでも意味があると思いますけど。」
医「・・・」
医「他の人からもたくさん言われるが、(マスクは)しない。」
医「手術室では、意味があるから(マスクを)する。」
とゴニョゴニョ言って、次の話題へ移った。
すると、その後別の話をしながら、咳をしたり、くしゃみをしたりした。
そのとき、エチケットに反して、手を拳にして口を抑えていた。
そして、その手で、私に渡す血液検査のデータの紙や私の血圧手帳を触った。
飛沫感染が起こりうるシチュエーションであった。
もちろん、医師がなんらのウィルスを持っていなければ、問題ないのかもしれない。
しかし、そんな保証はない。
考察:
心理を探求している私としては、このことについて、あれこれ考察してみた。
まずは、医師の考えについて。
人それぞれ、考え方はいろいろあって良いので、
「マスクをする意味がないからしない。」
は良いとしよう。
でも、周囲の人から「マスクしてください」と言われているのに、頑なにマスクをすることを拒否する理由は、はっきりしないまま。
本当は、他の理由があって、それを正当化するために、
先の「マスクをしたら100%感染を防げるということが証明されていないから。」
という理由を出してきてるに過ぎないのだろうな、という推測。
本当の理由を言えない、言いたくないから、誰からも異論を挟まれないような理由を持ってくる、というのは、誰もが良くやることだ。
これが、本音を隠す、ということ。
言えない、言いたくない理由は、それぞれだろうが、恥ずかしいから、とか、同意してもらえると思えないから、とか、いろいろあるだろう。
推測ではあるが、このように考えたら、少しは腹立たしさが収まった。
とはいえ、医師のことを理解することが目的ではなく、医師にマスクをしてもらいたい私としては、これだけでは不十分だ。
どうしたら、医師にマスクをしてもらえるだろうか?
を考えなければいけない。
話は変わって。
なぜ、私がここまで腹を立てるのか?
腹を立てる仕組みは分かっている。
自分が我慢していることを、やっている人を見ると腹が立つというのは分かっている。
「自分は、こんなに我慢しているのに、なんであいつは、平気で(平気ではないのかもしれないが)やっているんだ。ずるい。不公平だ。あいつも私のように我慢すべきだ。」
というのが、腹の立つ仕組みだ。
ようするに、自分が自分を律しているルールを他者にも従わせたいということだ。
これを解決するのには、自分が我慢するのを辞めること。
自分が自分に課しているルールを放棄すること。
言うのは易いが、これがなかなか。
自分が自分に課しているルールは、多くの場合、親からの躾だったり、言いつけだったりする。
それが、刷り込まれているので、当たり前になっていて、自分でも気づかないレベルになってしまっている。
そして、何の評価をすることもなく、正しいと思い込んでいるのである。
今回の私の場合は、自分は、これだけ感染しない(させない)ように用心していように、(医療従事者である)あなたも同じように用心するべきだ。
という思いが、怒りになっているのだ。
普段、怒りを感じにくい、感じても長引かない私が、今回長引いているのはなぜか?
私は、こだわり(自分に課すルール)がほとんどない。
なので、怒りを感じにくいし、感じたとしても、すぐに
「ま、いっか」
となってしまう。そうできてしまう。
でも、今回は、万が一、自分が感染してしまったら、という自分の健康・命に関わることなので、簡単に「ま、いっか」とはできないのだな、と思った。
自分は、肺炎の既往があるし、透析患者という基礎疾患を持ったハイリスク群である。
しかも、生体腎移植を前に、免疫抑制をすることになっている時期だった。
健康な人と比べて、感染しやすく、重症化しやすい状況なのだ。
それは、新型コロナウィルスに限ったことではない。
誰もがキャリアではあるが、通常の免疫下では発症しないウィルスでさえも、免疫抑制をすると発症してしまうリスクがある。
という事情があるからだ。
ということで、当該医師が、次回もまたマスクなしで回診に来たら、距離を取って、離れて話をしてもらうよう頼んでみることとする。
医師が自身の考えに基づいて、マスクをしないなら、私は私の考えに基づいて、距離を取って話をすることにする。
透析中、私は自由には動けないので、医師に離れてもらうことをお願いすることしかできないのが悔しい。
そして、次回の回診時、当該医師はマスクをして現れた。
安心した。
その次は、ノーマスクで現れた。
指摘した。
「あ、さっきはしていたのに、忘れた。」
といって、スタッフに頼んで新しいマスクを用意させて着用した。
そのやり取りをスタッフは見ていたので、医師が忘れていたらスタッフに言って着けてもらえるようになった。
そして、忘れずに着けてくるようになった。
なぜマスクを着けるようになったのかは定かではないが、私が望む結果にはなった。
あの一人で悶々と腹を立てていたのはなんだったのか?
と思わないこともないが、一件落着。
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