省略
話し手と聞き手の間で共有している情報は省略してもよい、という前提があります。
しかし、共有している「つもり」だけの場合があります。
また、省略しても分かってもらえる、という前提で省略することもあります。
結果、分かってもらえない、誤解を生むという、コミュニケーションミスが起こります。
このことを分かっていただくために、私はセミナーで参加者に次のような意地悪なことを聞きます。
私:今日、あなたはここまでどうやって来ましたか?
参加者:電車で来ました。
私:歩いてはいないのですか?
もちろん、まったく歩かずに来られるワケがないことは、私にも分かっています。
参加者が、「そんなことは言わなくても分かるだろう」と思って、「省略」をするということに気付いていただきたくて、こんな意地悪をしています。
省略することは悪いことではありません。
省略をしなければ、伝えなければならない情報が多すぎて、円滑なコミュニケーションをすることができなくなってしまいます。
私:今日、あなたはここまでどうやって来ましたか?
参加者:8:15に家を出て、玄関横に置いてある自転車まで7歩歩いて、それから自転車に乗って、最寄駅まで12分。駅までのルートは、・・・。
これでは、いくら時間があっても足りません。
なので、省略は必要です。
ただ、どの情報を省略するのかを選ぶ(フィルターをかける)のは、その人それぞれの前提に影響をされるということを知っておくことが重要です。
例えば、
- 自分が聞きたかった情報が省略されてしまった
- 話し手が省略した情報と聞き手が補った情報が食い違っているようだ
ということが起こりえます。このようなときには、上手に質問することで解決できると良いでしょう。
例えば、
- 電車は何線に乗って来たんですか?
- どこかで乗り換えましたか?
- どのくらい時間がかかりましたか?
- 駅まではどうやって行きましたか?
- 18分かかったというのは、自転車でですか? バスでですか?
といった具合です。
一般化
人は、一部の事実を見て、それがあたかも全体を表しているかのように解釈することがあります。
そして、それを表現することがあります。
例えば、
- みんながそう言っている。
- 何をやってもうまくいかないんです。
- あの人はいつも、あんなことをする。
といった具合です。
1.については、具体的に「誰が」言っているのかを質問してみる必要があります実は、自分の周りの2,3人が言っているだけ、ということは良くあることです。
ひどいときには、自分がそう思っているだけで、周りの人の言うことは聞いたことがないということさえあります。
2.については、具体的に「何を試してみたの?」「何回やってみたの?」と質問してみると良いでしょう。
よくよく聞いてみると、実は、同じやり方でしかやっていない、ということがあります。
しかも、2,3回やってみただけという。
「何をやっても」というと、あらゆる手段を講じたように聞こえますよね。
3.については、そうでないときはないのか、を質問してみると良いかもしれません。
「いつも」のワケがありません。
強調するために、オーバーに言っているだけのことが多いです。
歪曲
人は、ある事実を見て、間違った解釈をすることがあります。
そして、それを表現することがあります。
例えば、
- あの人ににらまれた。怒らせてしまったに違いない。
- お客様からメールの返信が来ない。何か失礼なこと書いちゃったかな。
- あの人に嫌われているようです。あいさつしても返ってこないんです。
といった具合です。
1.に対しては、
- にらんだのではなく、ただ見ていただけだとしたら?
- あなたを見ているのではないとしたら?
- 何か、怒らせてしまうようなことをしちゃったの?
2.に対しては、
- 単に忙しいだけなのかもね。
- 迷惑メールフォルダはチェックした?
- そう思う理由が何かあるの?
3.に対しては、
- 嫌われるような心当たりがあるの?
- あなたの声は小さいから、あいさつに気付いてないのでは?
- 本人に聞いてみたことあるの?
などと、違う可能性があることに気付く質問をしてみると良いでしょう。
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