腎移植のための入院中の心理実験
私は日々、人間観察をしたり、自分の感情の動きを観察したり、考え方で感情が変わるかを自分を実験台にしてみたり、ということを面白がってやっています。
特に病院は、人間観察をするのに、とても向いている場所なのです。
ということで、腎臓移植のために入院していたときの実験についてのお話です。
私は二人部屋を利用していました。
大部屋は4人か6人部屋なので、それに比べれば人数が少ないので静かに過ごせます。
個室に比べれば、自分ともう一人いるので、多少は気を遣って過ごします。
そんな二人部屋での出来事です。
病棟のルールとして、消灯時刻は夜10時、起床時刻は午前6時です。
消灯時刻までに窓側の人がカーテンを閉めます。
起床時刻になると窓側の人がカーテンを明けて、廊下側の人が部屋の電灯を点けます。
ただ、カーテンと電灯のことはルールに定められているわけではありません。
今回、手術直後の4日間は、たまたま同部屋の人がいなくて、二人部屋を一人で使っていました。
その後、入院してきたお隣さんのお話です。
入院してきた日(1日目)のことです。
午前4:30ころに、チラッとカーテンを開けました。
午前5:00ころカーテンを大胆に開けました。
2日目
お隣さんは手術後でベッド上安静なので、自分でカーテンを開けることはないと安心していました。
そしたら、そもそもカーテン閉めずに寝ていたのです。
こういうときは、ナースがカーテンを閉めてくれるはずなのですが、閉めないでと要求したのだろうか?
その辺は定かではありませんでした。
3日目
就寝前、カーテンが閉まっていることが確認できました。
なので、もしかしたら翌朝は大丈夫かも? と期待をしました。
しかし、どのタイミングからかは分かりませんが、カーテンを少し開けた状態にしていたのです。
明け方、部屋は電灯を点けているくらいの明るさになっていました。
私は、そのころには目が覚めて、うつらうつらしている状態でした。
そして、5時ころです。カーテンを勢いよく開けるという暴挙(?)に出たのです。
一気に、朝日が差し込んできます。
私は、そのカーテンを開ける音と朝日の眩しさで、すっかり目が覚めてしまいました。
それから、お隣さんはずっとゴソゴソやっていました。
いびきや歯ぎしりなどはうるさいとは思うけれど、仕方ないものです。
生理現象だし、自分もしているかもしれないことですし。
大抵のことでは腹が立たない私だが、今回ばかりは腹が立ちました。
とはいえ、小心者なので直接言うことなんてできません。
舌打ち+小声で「うるさいなぁ。」とか「まだ6時になってないじゃん。」とか言ってみたくらいです。
効果はありませんでした。
部屋を変えてもらえるよう申し出ようかと思ったのですが、ここは心理の研究者です。
翌日実験してみることにしました。
どうせ翌日はお隣さんは退院の予定でしたので、もう1日だけ我慢すれば良いというのが分かっていましたから。
で、実験の内容は。
6時に起きるつもりで寝ているのに、5時に起こされるから腹が立つのではないか?
だとしたら、5時に起きるつもりで就寝したら、腹は立たないのかもしれない。
と思ったのです。
その日の就寝時、明日は5時に起きようと思って床に就きました。
実験の結果や如何に?
まず、この実験を思い付いた時点で、今朝の腹立たしさ、明日朝に対する憂うつはだいぶ軽減された。
さて、実験の結果はどうだったでしょう?
意外な結果になってしまいました?
私は翌日5時(早ければ4:30)に起きるつもりで就寝しました。
そして、ガサゴソ、ガサゴソという物音で目が覚めました。
お、もう5時か?
と思いましたが、まだ窓から差し込む光がありません。
時刻を確認すると、午前2:30です。
お隣さんが何やらガサゴソとやっています。
腹が立つのを通り過ぎて、呆れてしまいました。
しかし延々と、ゴソゴソ、ガサゴソとやっているので、だんだんイライラが募ってきました。
ときどきボソッと独り言まで言っています。
この時刻ですから、私もまだ眠気があります。
さすがに腹が立ってきてしまい、小心者の私の口からですら、
「少し静かにしてもらえませんか!」
という言葉が出ました。
「あ、はい。」と驚いたような声が返ってきました。
すぐに音は小さくなりましたが、しばらくカサコソと続いていました。
その後、ようやく静かになりました。
小心者ならお分かりだと思うが、抗議の声を上げるのには勇気がいります。
声を上げようと考え始めた途端にドキドキし始めます。
そして、なんて言おうか、とシミュレーションをします。
タイミングを見計らって声を出します。
たいていシミュレーションした通りの発言にはなりません。
そして、今の言い方はどうだったんだろう、ちゃんと意図は伝わったかな、などと振り返ります。
声を上げた後も、なかなかドキドキがおさまらないものです。
そんなドキドキがあって、しばらくは寝付けずにいました。
とはいえ、いつの間にか寝入って、次に目が覚めたのが5時過ぎでした。
お隣さんは静かめにカサコソやっていました。
なんだよ、もっと豪快にやってくれれば、こちらも一緒に起きて朝の身支度を始めようと思ったのに、微妙やないかい。
なんて考えたいたら、5:30になり、今さら寝ても仕方ないので、ベッドを起こして起きることにしました
※ガサゴソやカサコソは、床頭台(病室のベッドサイドにあるテレビなどが備わっている収納家具)の引き出しの開け閉めやビニール袋やレジ袋のカサカサ、ガサガサ音、物をテーブルに置くときの音などです。
同じ音でも、昼間聞くより夜中の方がうるさく感じるのはお分かりだと思います。
ただ、今回のお隣さんは、昼間にガサゴソやっているのを聞いたことがありません。
夜中にだけやっていたような印象です。
<実験結果>
結局、お隣さんが、私を腹立たせる才能があることが分かったというだけで、実験にはならなかった、というオチです。
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