第3章 2つの心理的ツボ
第2章で人間が行動する(しない)理由をお話しましたが、
私は何か足りない氣がしていました。
それを、第2章のタバコの例で説明します。
「タバコを吸う」と「リラックスできる」
この場合、「タバコを吸う」とその場、その時に「リラックスできる」
から分かりやすいのです。
つまり、行動(タバコを吸う)をすると、その結果(リラックスできる)が
すぐその場で得られるのです。
ところが、あなたがお客様に望む行動は「購買行動」ですよね。
「あなたの製品(サービス)を買う」と「その製品(サービス)のメリットを感じる」
「あなたの製品(サービス)を買う」という行動と
「その製品(サービス)のメリットを感じる」という結果が得られること
の間には、時間差があります。
時間差があるということは、
「あなたの製品(サービス)を買う」という行動によって、
その場、その時に感じられる
「快」と「不快」を考える必要があるのではないかと思うのです。
そして、その「快」「不快」と
時間をおいた後に得られる「その製品(サービス)のメリットを感じる」ことの
バランスにおいて、お客様は行動したり、しなかったりするのです。
ここが、私が氣付いた部分です。
少し、一般化した言い方をしますと、
目先でやることの「快」「不快」と
その結果として得られるものの「快」「不快」の
バランスを考える必要があるということです。
図で説明してみましょう。
「Aをすると、Bになる」とします。
「Aをする」ことがその人にとって
「快」か「不快」かを考えます。
そして、その結果得られる「Bになる」ことがその人にとって
「快」か「不快」かを考えます。
そして、その「快」「不快」を線上に書いてみます。
左に行くほど「不快」が大きい、右に行くほど「快」が大きいことを表します。
すると、以下の6個の組み合わせが考えられます。
これは、目先でやることに「不快」を感じ、
その結果「不快」が得られるというパターンです。
この場合、人は行動しますか?
行動しませんよね。絶対イヤですよね。
例えば、嫌いな食べ物を食べると、アレルギーが出てしまう。
という場合です。
食べること自体がイヤなのに、さらにそれを食べるとアレルギーが出てしまうのならば、
絶対にその食べ物は食べません(行動はしません)よね。
これは、目先でやることの「不快」と
その結果得られる「快」を比べると、
「快」の方が大きいというパターンです。
この場合、人は行動しますか?
やりたくないけど、我慢してやる。つまり、行動しますね。
例えば、苦い薬を飲むと、病氣が良くなる。
という場合です。
薬を飲むのは苦くてイヤですが、それよりもそれで病氣が良くなるのならば、
我慢して薬を飲みます(行動します)よね。
これは、目先でやることの「不快」と、
その結果得られる「快」を比べると、
「不快」の方が大きいというパターンです。
この場合、人は行動しますか?
労力の割には得られるものが小さいから、行動しませんね。
例えば、丸々一日働くと、50円もらえる。
という場合です。
やる氣になりませんよね。
「私は、それで自分が鍛えられるなら、やるかもしれません」と言った方がいます。
その場合、結果として「自分が鍛えられる」という「快」が
丸々一日働く「不快」よりも大きく思えるようになったから、
その仕事をやろうと思ったのです。
つまり、その場合は(2)の形になっているということが分かります。
これは、目先でやることに小さな「快」を感じ、
その結果大きな「不快」が得られるというパターンです。
この場合、人は行動しますか?
やりたいけど、我慢してやらない。つまり、行動しませんね。
例えば、甘いものを食べると、太ってしまう。
という場合です。
甘いものが好きでも、太ることがそれ以上にイヤならば我慢しますよね。
これは、目先でやることに大きな「快」を感じ、
その結果小さな「不快」が得られるというパターンです。
この場合、人は行動しますか?
やらない方が良いのは分かっているけれど、我慢ができない。つまり、行動しますね。
例えば、甘いものを食べると、太ってしまう。
でも、甘いものを食べたいという氣持ちが大きくなると、
我慢できなくなって、食べてしまうということですね。
(4)と(5)は、「快」「不快」のバランスによって、
我慢するか、我慢できないか、が決まるのです。
これは、目先でやることに「快」を感じ、
その結果「快」が得られるというパターンです。
この場合、人は行動しますか?
喜んで行動しますね。やめろと言っても、やめないでしょうね。つまり、行動します。
例えば、サッカーが好きな人が、練習をすると、強くなる。
という場合です。
サッカー自体が好きで、強くもなりたければ、やめろと言っても練習をするでしょう。
強くなるのも当然といった感じですね。
以上の6パターンをお客様の購買行動に置き換えてみたらどうでしょうか?
お客様が目先でやることと言ったら、
例えば、
・打ち合わせをする
・稟議書を書く
・稟議に掛ける
・決済(承認)を取る
・発注手続きをする
・代金を支払う
・設置工事をする(製品によって)
・試運転、調整をする(製品によって)
など、製品やサービスによって異なりますが、いくつかの作業が絡んできます。
もちろん代金の多寡(高いか安いか)も関係すると思います。
そして、得られる結果は、
あなたから購入した製品(サービス)を使うことによるメリット
ということです。
あなたが欲しい結果は、お客様に購買行動をしてもらうことです。
だとしたら、目先でやること(A)とその結果として得られること(B)のバランスは、
6パターンの内の(2)(5)(6)のいずれかの形にする必要があります。
一番の理想形は(6)ですね。
目先でやること(もしくは代金の多寡)もお客様にとって嬉しい=「快」
その結果として得られるものも嬉しい=「快」
となれば、お客様は喜んであなたの製品(サービス)を購入するでしょう。
次に良い形は(2)ですね。
多少の手間や費用はかかるけれど(目先でやることの小さな「不快」)、
それよりも大きなメリット(=「快」)が得られるのだから、
あなたの製品(サービス)を購入しよう、ということです。
(5)の形は、そのときはあなたの製品(サービス)を購入していただけるので、
その場限りのビジネスとしては良いのかもしれませんが、
長い目で見ると、お客様に損(=「不快」)を与えてしまうことになるので、
継続的な取引ができなくなってしまうでしょう。
これでは、優秀なセールスパーソンとしては失格ですね。
ということで、
(6)か(2)の形にすれば良いということが分かります。
つまり、
(a)目先でやることの「不快」を小さくしてあげる
(理想は目先でやることの「不快」を「快」にしてあげる)
(b)得られる結果の「快」を大きくしてあげる
ということの両方、もしくはどちらかを、
あなたがクロージングですれば良いということになります。
(a)としては、
例えば、値引きだったり、作業の全部または一部を肩代わりすることだったり、
おまけを付けることだったりします。
お客様が何を「快」と思い、何を「不快」と感じるかはまちまちですので、
それをうまく聞き出して、それに対応する必要がありますね。
例えば、法人向けのセールスの場合、
決済権者と担当者が違うときがありますよね。
というか、ほとんどそういう状況なのではないでしょうか。
こんなことを経験したことはないですか?
「製品が良いのは分かったけれど、これをどうやって上司に説明したら良いのやら」
こんなときは、担当者の方が上司に提出する稟議書に必要な情報を聞き出して、
その形に合わせて提案書の作成、提出する。
担当者は、提案書の中からコピぺすれば良い。というようにしてあげる、
などの工夫をすることで、目先でやることの「不快」を小さくすることもできます。
お客様が目先でやることを想像できずに不安を感じているということもあります。
そんなときは、その不安を取り除くことも大事ですし、
お客様が目先でやることを実際以上に大変なことだと誤解しているならば
その誤解を解くことも大事になってきます。
お客様にとって何が「快」で何が「不快」かを正しく聞き出したり、
お客様が不安を感じているのに氣付いたり、誤解していることに氣付いたり、
お客様とのコミュニケーションの中でうまくそれらができるような、
コミュニケーションスキルが必須になってきます。
(b)としては、
製品(サービス)の良さを伝えるだけでなく、その製品(サービス)を使うことで、
どんなメリットがあるのか、
例えば、作業効率がこれだけアップするとか、コストがこれだけ低減できるとか、
売上がこれだけアップするとか、ミスがこれだけ低減できるとか、ということを
お客様がイメージできるようにお話すれば良いということになります。
また、法人向けセールスの場合は、
お客様企業の法人としてのメリット(売上アップ、コストダウンなど)を打ち出した
セールストークが必要になりますが、
それだけではなく、実際に交渉の相手となる担当者のメリットも同時に打ち出せると
効果的な交渉ができることがあります。
担当者も人間ですから、「快」「不快」で動いています。
早い話、会社にとってメリットがあったとしても、
自分の手をわずらわすようなことはしたくないはずです。
ですから、あなたの製品(サービス)を使うことで、
担当者個人が受けられるメリットも一緒に提示してあげることも大事な要素
になってくるのです。
「この製品(サービス)を使って、会社の利益が向上すれば、
社内的なあなたの株が上がりますよね?」
例えば、このような、法人のメリットと担当者個人のメリットを同時に打ち出すのです。
それがイメージできたところで、話がトントン拍子で進むこともありますよね。
もちろん、担当者がどんな状態を望んでいるのか、
個人的にどんなメリットが受けられるのか、
といった話ができるくらい、担当者との信頼関係が築けていることが前提ですが。
そのために、担当者と信頼関係を築くためのコミュニケーションスキル、
信頼関係を築いた上で、お客様(法人、担当者)が何に困っているのか、
望んでいるのはどういう状態なのか、をあなたが正しく理解できるよう、
うまく聞き出せる、そして、お客様が手に入れるメリットを充分にイメージできるよう
に伝えられるだけの、コミュニケーションスキルが必須になってきます。
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