1.6.4.3.人が行動をする動機とは
もう1つ、反応に影響をするモノについて考えていきたいと思います。それは、「動機」です。
「動機」には大きく分けて2つあります。
- モチベーション
- テンション
です。
ここで、言葉を定義しておきたいと思います。
モチベーション:長期的に、大きく変化する動機
- 生活のため
- スキルアップのため
- あの人のためなら
- 夢の実現のため
- 価値観の実現のため
- などなど
テンション:短期的に、細かく変化する動機
- 機嫌が良い/悪い
- 天気が良い/悪い
- ケンカした
- 怒られた
- 褒められた
- などなど
で変化する気分的なモノ
両者の違いを「図3−5 モチベーションとテンション」に図示します。
図3−5 モチベーションとテンション
2021.04.15
コミュニケーション、心理学を知る
コミュニケーションを知る 心理学を知る モチベーションとテンション では、次はその...
モチベーションのサイクルは長期的に変化していることを示しています。テンションのサイクルは短期的に変化していることを示しています。
そもそものモチベーションが低ければ、テンションが上がっても行動は起こしません。
一方、モチベーションが十分高ければ、日々のテンションの上下が行動に影響することはありません。
それでは、「動機」を上下する要因はなんでしょうか?要因には2つあります。
- 「快」を得たい
- 「不快」を避けたい
です。
「快」には、
- 好き
- 気持ちいい
- 楽しい
- 美味しい
- リラックス
- 安心
- 満足
- など・・・
があります。
「不快」には、
- 嫌い
- 痛い
- 退屈だ
- まずい
- ストレス
- 心配
- 不満
- など・・・
があります。
まとめると、
- 「快」を得るために、ある行動をする。
- 「快」を得るために、ある行動をしない。
- 「不快」を避けるために、ある行動をする。
- 「不快」を避けるために、ある行動をしない。
ということになります。
そして、「快」や「不快」が長期的なものであれば、モチベーションに影響します。
「快」や「不快」が短期的なものであれば、テンションに影響します。
具体例を挙げてみましょう。
タバコの例:
タバコの匂いが嫌だ、タバコは身体に悪いと考えている人にとって、タバコは「不快」に分類されます。
なので、「不快」であるタバコを避けるために、その場から離れるという行動をしたり、タバコを吸うという行動をしなかったり、ということです。
タバコは旨い、タバコを吸うとリラックスできると考えている人にとって、タバコは「快」に分類されます。
なので、「快」であるタバコを求めて、タバコを吸うという行動をしたり、禁煙という行動をしなかったり、ということです。
保険の例:
先に保険料を支払う「不快」と何かあったときに保険金がもらえる安心感という「快」が、その人にとって、どちらが強いか、が保険に加入するかしないかを分けることになります。
このように、同じモノ・コトでも、人によって「快」なのか、「不快」なのかは違っています。
なので、その人の行動を観察していれば、そのモノ・コトがその人にとって「快」なのか、「不快」なのかを知ることができます。
また、「快」と「不快」のバランスによって、行動を起こすかどうかが決まるということもお分かりになると思います。
何度言っても、やることをやらない、という場合は、その「やること」の中に避けたい「不快」が含まれているということです。
何度言っても、ダメなことをやめらない、という場合は、その「やめられないこと」の中に得たい「快」が含まれているということです。
「図3−6 快・不快と時間差」は、ある行動をすることで今すぐ感じる「快」「不快」とその行動をした結果として感じる「快」「不快」の関係をグラフ化したものです。
図3−6 快・不快と時間差
Aの領域は、その行動をすることで、今すぐ「快」を感じ、その結果としても「快」を感じる場合です。
この場合は、積極的にその行動をする、ということになります。
例えば、健康に良いとされる食べ物が大好きな場合です。
大好きなので、食べている今「快」を感じます。
そして、将来健康になるという「快」も得られるということです。
Bの領域は、その行動をすることで、今すぐ「快」を感じます。
しかし、その結果として「不快」を感じます。
そして、この「快」と「不快」を比べると、「快」の方が強いという場合です。
この場合は、ちょっと迷うかもしれないけれど、その行動をする、ということになります。
例えば、今日からダイエットをしようと思ったら、家族がケーキを買って帰って来たので、食べてしまった、というような場合です。
食べたら太ってしまうという「不快」より、今食べられる「快」の方が強いので食べてしまう、ということです。
Cの領域は、その行動をすることで、今すぐは「不快」を感じます。
しかし、その結果として「快」を感じます。
そして、この「不快」と「快」を比べると、「快」の方が強いという場合です。
この場合は、イヤイヤながら、その行動をする、ということになります。
例えば、部屋のお掃除はめんどくさいけれど、キレイになった部屋で過ごすのが気持ち良いことが分かっている、というような場合です。
めんどくさいから、なかなかお掃除を始められませんが、やっぱり気持ち良く過ごしたいから、お掃除をしてしまう、ということです。
同様にグラフを見ていくと、
Dの領域は、今すぐも、将来も「不快」を感じるので、絶対にその行動をやりません。
Eの領域は、将来感じる「快」よりも、今すぐ感じる「不快」の方が強いので、まずその行動をやることはないでしょう。
Fの領域は、今すぐ感じる「快」より、将来感じる「不快」の方が強いので、何とか我慢してその行動をやらないでしょう。
このことから、自分自身や他者を行動に駆り立てるためには、感じている「快」をさらに強く感じられるように、新しい「快」を与えてあげたり、気付いていない「快」に気付かせてあげる、というコミュニケーションをすると良いことが分かります。
加えて、感じている「不快」の感じ方を弱くしたり、取り除いたり、してあげるというコミュニケーションをすると良いことが分かります。
いずれの場合も、実際に、「快」「不快」と感じるモノ・コトを増やしたり、減らしたり、加えたり、取り除いたりできないとしても、その人の感じ方を強めたり、弱めたりすることができれば、良いのです。
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