Hくん 01:「省略」を学ぶ

今日は、どうしたら上司が期待していることをキチンと理解できるのか、という話だったよね。

ちなみに今日はここまで何で来たの?

電車できました。

そうか、電車で来たんだ。
JRで来たの? 地下鉄で来たの?

JRで来ました。

JRで来たんだ。
自宅から最寄駅までは歩いて来たの?

駅までは自転車です。

へ~、駅までは自転車なんだ。
駅まで何分くらいかかるの?

10分くらいですね。

駅前に自転車置き場があるの?

はい。あります。

自転車置き場から駅まではどのくらい?

歩いて1分もないです。

近くていいね。

はい。
なぜ、いきなり全然関係ない話をこんなにしたのでしょうか?
それにはもちろん意味があるんだよ。
ちょっと、今までの会話を振り返ってみようか。

あ~、はい。

最初に僕がした質問は、「ここまで何で来たの?」だったね。
きみは、「電車で来た」と答えたよね。
でも、よくよく聞いてみると、自転車も使っている。
それなのに、きみは自転車のことは言わなかった。
その理由は?

それは~、え~と、そこまで言う必要はないと思ったからです。

なるほど。
そこまで詳しく聞かれているとは思わなかったんだね。

そうです。

それに、きみは短い距離かもしれないけれど、歩いてもいるよね。
そのことを言わなかったのはなぜ?

それは、言わなくても分かると思ったからです。

確かに。
言わなくても、どこかで歩いているだろうことは想像できるもんね。

このように人は話をするときに、「そこまで言う必要はないだろう」「言わなくても分かるだろう」ということは省略するでしょ。
いちいち自分の家から何分歩いて駅まで着いたとか、道の右側を歩いたのか、左側を歩いたとか、階段が何段あったとか、どの改札から入ったとか、何番線から何時何分の電車の何両目乗ったとか、細かい事まで厳密に話をしていたら話が全然進まないからね。
聞いている方もウザいよね。
だから、人はみな、話すときに省略するんだ、ということを知っておくことは大事なんだよ。

そして、問題は、人や状況によって、何をどのように省略するのかが違うということなんだ。

例えば、朝、職場に行ったら、早速上司から
「今日、取引先の担当者と食事をするから、お店の予約をしといてくれ」
と指示されたとしよう。

ここで省略されているのは、何だか分かる?

え~と、どのお店を予約するのか、ということですか?

そうだよね。他にも省略されていることがあるでしょう?

どの取引先の誰なのか、人数は何人なのか、というのも省略されていると思います。

そう! その・り。
それに、ランチなのか、ディナーなのかも省略されているよね。
取引先との食事といったらディナーが多いとしたら、きみはディナーの予約をするかもしれない。
でももし、上司はランチミーティングのつもりで言ってとしたら、トラブルになっちゃうよね。

それは、マズいですね。

このように、人の話を聞いているときには、省略されているモノが何なのかを穴埋めしながら、相手の話を解釈しているワケだけど、
ときには、何で穴埋めしたら良いのかが分からないこともあるだろう。
穴埋めが間違ったり、分からなかったりしても問題にならない場合なら良いけれど、間違ったら大変なこともある。

本当ですね。

自分がした穴埋めが正しいのか、何で穴埋めをしたら良いのかを質問して、確認することって、とても大切なんだって分かってもらえたかな。

~~~~~~~~~~~

話に熱が篭もって来たところなのに、悪いんだけど、もう一人お客さんが来るので、1つ隣の席にズレてもらってもいいかな?

あ、はい。

ありがとう。
ところで、なぜ今きみは1つ隣の席に移動したの?

え、だって、今、ズレてって言われたから。

僕は、ズレて、とは言ってないよ。
「ズレてもらってもいいかな?」と質問はしたけれどね。

え~、そんな~。

ゴメン、ゴメン。
でも、本当に僕が言ったのは、「ズレてもらってもいいかな?」という質問だった。

言葉の意味だけで考えたら、YesかNoで答える質問だよね。

確かに、そうです。

でも、きみは席を移動した。

はい。

どうして?

移動して欲しいんだろうなぁ、と思ったからです。

そうだよね。
言葉の意味だけで考えたら、YesかNoかで答える質問だけど、文脈から考えると、移動してください、っていう意味になるよね。

例えば、きみの部屋に好きな女の子が遊びに来たとしよう。
その子が、「この部屋少し暑くない?」と言ったら、きみならどうする?

窓を開けるか、エアコンを付けます。

そうだよね。それが自然だよね。
そこできみが「そうだね、少し暑いね」とか「そう? 全然暑くないよ」とか言ったら、気が利かない人だと思われちゃう。

それは避けたいです。

もちろんだよね。
人、特に日本人は、言いたいことがあっても、言いにくいことは遠回しな表現をすることが多いから、

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