コミュニケーションの目的を達成するために大事なこと(動機)

人間の動機


1.恐怖
2.報酬
3.尊敬する人に褒められたい。

これらもすべてたった2つに分類できる。

快を求めて、不快から逃げる

「自分が望む相手の反応を得る」ために、何が人の動機になるのかを知っておくのは大事です。

人の動機は、たったの2つです。

  1. 「快」を求める
  2. 「不快」からが逃げる
    です。

「快」とは:
気持ち良い、うれしい、楽しい、美しい、美味しい、落ち着き、やすらぎ、温もり、つながり、幸せ、・・・、などです。

「不快」とは:
気持ち悪い、痛い、悲しい、暑い、寒い、汚い、忙しい、居心地が悪い、離別、不幸、・・・、などです。

人の動機、すなわち、行動を起こす、または、行動を止める理由は、
「快」を求めるか、「不快」から逃げるかのたった2つということができます。

人の動機は、たった2つと単純なのですが、ことを複雑にしている要因があります。

それは、人によって、
何を「快」と感じ
何で「不快」と感じるか
がまちまちだということです。

この、何を「快」とし、何を「不快」とするか、のことを連想体系と言います。

人によって、連想体系が違うことが、ことを複雑にしているということができます。

例えば、タバコについて:
私にとってタバコは「不快」という連想体系になっています。

  • 臭いが嫌いです。
  • 煙を吸うと、むせてしまって苦しいです。
    なので、タバコ=「不快」から逃げます。
    タバコの煙や臭いのする場所から遠ざかります。

喫煙者にとっては、タバコは「快」という連想体系です。

  • 吸うと落ち着く
  • リラックスできる
    などの理由があるのでしょう。

なので、タバコ=「快」を求めて、喫煙します。

例えば、ジョギングについて:
私の場合、今は全くと言っていいほど運動をしません。
そんな私にとっては、ジョギングは「不快」という連想体系です。
100m走ることを想像しただけでも、ぐったりしてしまいます。

なので、私は、ジョギングをしません。

一方、毎日のジョギングが習慣になっている人は、

  • 走らないと気持ち悪い
    朝走る人は、走らないと一日が始まらない
    夜走る人は、走らないと一日が終わらない
    と言います。
    こういう人にとっては、ジョギングは「快」という連想体系だということです。

このように、連想体系が人によって違うことが、ことを複雑にしています。

しかし、原則は「快」を求めて、「不快」から逃げる、と単純です。

もしどうしても、自分には理解できない、他者の行動があったら、その人の行動を観察して、その人の連想体系を探ってみましょう。

何を求めて行動しているのか?
何から逃げるために行動しているのか?

それが分かってくると、その人の行動に謎が解けます。

相手の連想体系が分かれば、「自分が望む相手の反応を得る」ための話し方、プレゼンの仕方が分かってくるでしょう。

コミュニケーションの目的を達成しやすくなりますね。

ここで、1つの例を紹介します。

先生は、Aちゃんにとって、逆上がりが1人だけ出来ないことを「不快」、出来るようになることを「快」だと、勝手に決め付けていたのです。
そして、Aちゃんは、逆上がりが出来るようになるために練習している、と思い込んでいたのです。

Aちゃんは実は練習が「不快」で、そこから逃げるために、
「練習はしたくありません」
と、先生には言えず、逆上がりが出来るようになるしか方法がなかったので、練習をがんばっていたのです。

先生とAちゃんの思い違い、すれ違いです。

先生は最初から練習に誘う必要がなかったのです。
思いやりがあだになってしまったのです。
先生の思い込みで、Aちゃんを苦しめていたという話です。

このように、人の連想体系の違いによる悲劇を避けるために、相手の連想体系を観察して探ったり、直接聞いて確認したり、というのは大事なことなのですね。

目先の快/不快と結果の快/不快

人の動機や連想体系について解説しました。
ここでは、もう少し突っ込んで考えてみたいと思います。

人間には時間の観念や想像力が備わっています。
このことを加味した連想体系について、考えてみましょう。

人には、目先の「快」「不快」だけでなく、それをした結果の「快」「不快」を考えることができます。

なので、実際に行動するかしないかは、この2つ関係から決まるようになります。
図は、目先の「快」「不快」とそれをした結果の「快「「不快」の関係を示したものです。

横軸が目先の「快」「不快」です。
右側に寄っているほど、目先の「快」が大きく、
左側に寄っているほど、目先のが「不快」が大きい
ということです。

上側に寄っているほど、それをした結果の「快」が大きく、
下側に寄っているほど、それをした結果の「不快」が大きい
ということです。

図中のAの領域は、
目先で「快」を感じ、それをした結果も「快」である
という連想体系の場合です。

痩せたいと思って運動している、運動好きさんの例です。

運動好きなので目先の「快」を感じます。
運動すれば痩せられます。
痩せたいと思っているので、その結果にも「快」を感じます。

このような場合は、喜んで積極的に行動を起こします。

図中のBの領域は、
目先で「快」を感じ、それをした結果は「不快」である
目先の「快」と結果の「不快」を比べると、目先の「快」の方が大きい
という連想体系の場合です。

太るのは嫌だけど、甘い物は大好き。甘い物を我慢するくらいなら、太っても良い、という人の例です。

甘い物が大好きなので、食べたい。
食べることに「快」を感じます。
しかし、太りたくはない。
なので、その結果は「不快」です。

でも、太りたくない「不快」より、食べる「快」の方が大きい
という状態です.

このような場合は、躊躇しながらも、行動を起こしてしまいます。
甘い物を食べてしまう、ということです。

図中のCの領域は、領域Bと似ていますが、目先の「快」と結果の「不快」を比べると、結果の「快」の方が大きい
という連想体系の場合です。

甘いものは好きだけど、太りたくない。
太ることはありえない。
という人の例です。

甘いものが好きなので食べたい。
食べることに「快」を感じる。

しかし、絶対に太りたくない。
その結果は「不快」であり、食べることの「快」よりも大きい
という状態です。

このような場合は、我慢して行動を止めます。
甘い物を我慢して食べないということです。

図中のDの領域は目先で「不快」を感じ、それをした結果も「不快」である
という連想体系の場合です。

新しいことにチャレンジするのはめんどくさいし、
失敗するのもイヤだ
という人の例です。

めんどくさいという目先の「不快」を感じます。
失敗するかもしれないという恐れを感じているので、結果にも「不快」を感じます。

このような場合、絶対に行動は起こしません。
チャレンジはしないということです。

図中のEの領域は、目先で「不快」を感じ、それをした結果は「快」であり、
目先の「不快」と結果の「快」を比べると、目先の「快」の方が大きい
という連想体系の場合です。

成功はしたいけど、チャレンジするには忙し過ぎる、という人の例です。

忙し過ぎて、チャレンジできない。
チャレンジすることに「不快」を感じます。
でも、成功したい。
結果には「快」を感じますが、チャレンジすることの「不快」の方が大きい
という状態です。

このような場合は、一時的には行動を始めるかもしれませんが、すぐにやめてしまうでしょう。

図中のFの領域は、Eの領域と似ていますが、目先の「不快」と結果の「快」を比べると、結果の「快」の方が大きいという連想体系の場合です。

今、忙しくてチャレンジする時間を作りにくいけれど、がんばって成功したい、という人の例です。

今、忙しくて、チャレンジする時間を作りにくい、と「不快」を感じます。

だけど、成功したい。
得られる結果「快」であり、忙しい中チャレンジする「不快」と比べて大きい
という状態です。

このような場合、なんとかして、行動を起こします。
時間を工面して、チャレンジするということです。

目先の快/不快、その結果の快/不快の関係が分かると、コミュニケーションの目的である、
「自分の望む、相手の反応を得ること」
を達成しやすくなります。

相手が、

  • 目先のことに「快」を感じているのか、「不快」を感じているのか
  • 得られる結果に「快」を感じているのか、「不快」を感じているのか

相手に行動を起こさせたいのならば、

  • 目先の「快」をより大きく
  • 目先の「不快」をより小さく
  • 得られる結果の「快」をより大きく
  • 得られる結果の「不快」をより小さく
    相手が感じられるように、話す・プレゼンすることを工夫しましょう。

相手に行動をやめさせたいのならば、

  • 目先の「快」をより小さく
  • 目先の「不快」をより大きく
  • 得られる結果の「快」をより小さく
  • 得られる結果の「不快」をより大きく
    相手が感じられるように、話す・プレゼンすることを工夫しましょう。

自分に行動を起こさせたい、やめさせたい場合は、自分が感じられる判断材料を集めてみましょう。

禁煙の例を挙げておきましょう。

タバコ=「快」という連想体系を壊して、
タバコ=「不快」という新しい連想体系をつくることです。

目先のこととして、

  • タバコを吸うのは苦しいこと(体感覚優位・心配タイプ向け)
  • 新鮮な空気は美味しいこと(体感覚優位・期待タイプ向け)
    を実感できるようにする。

得られる結果として、

  • タバコを吸い続けると、肺がこんなに真っ黒になってしまう、という写真を見る。(視覚優位・心配タイプ向け)
  • タバコをやめると、寿命がこれだけ伸びる、生涯のタバコ代・医療費がこれだけ節約になるというデータを見る。(聴覚優位・期待タイプ向け)

などです。

昔、私が参加したセミナー内で、禁煙のセッションがありました。
私はもともと非喫煙者なので、サポートとして参加しました。

そのときは、目先の快/不快の書き換えをしました。

まず、室内で。
タバコを1本くわえさせて、火を点けます。
普段よりも早いペースで吸わせます。
「吸え、吸え、吸え、何やってんだ、もっと吸え〜」と声をかけて急かします。

その後、慌ててタバコの火を消させます。
このときも、
「消せ、消せ、すぐに消せ」と急かします。
急かされる「不快」を与えているのです。

次は、タバコを2本くわえさせて、火を点けます。
また同じことをします。

そのあとは、タバコを3本、4本、5本と1本ずつ増やし、同じことを繰り返していきます。
私の記憶が正しければ、10本まで増やしたように思います。

中には、途中で、苦しくて脱落してしまう人もいました。

それが終わると、すぐに、脱落した人も含めて、鼻を洗濯バサミのようなもので挟んで塞ぎ、口には10本のストローをくわえさせました。
呼吸はストローを通してしかできない状態です。

そして、屋外に出て、お散歩です。
セミナー会場が山中だったので、ハイキングのようです。

お散歩中も呼吸はストローを通してだけです。
ストローを9本に、8本に、7本に、と1本ずつ減らしていきます。
このときも、酸欠のような状態で脱落してしまう人もいました。

そして、見晴らしの良いところに当直すると、鼻の洗濯バサミも、口のストローも外します。

そして、深呼吸をさせます。

山の美味しい空気を吸える幸せを味わわせるのです。

このセミナーの禁煙のセッションは、荒療治なので、安全を確保するために、しっかりと医療班が帯同してサポートしていました。
なので、安易に真似することはお勧めしません。

手法としては理に適っています。

前半の屋内のシーンでは、タバコを吸う目先の「快」を「不快」に書き換えています。

後半の屋外のシーンでは、タバコを吸い続けた結果としての「不快」を感じさせています。
つまり、タバコを吸い続けて、肺の病気になったときの苦しさを体験させているのです。

そして、最後のシーンでは、素敵な景色とともに、山中の新鮮で美味しい空気を思う存分吸えるという「快」を味わわせています。

このセッションに参加して、禁煙した人の話を聞くと、
「セミナー後、二度とタバコを吸いたいと思うことはなくなった。」
という人や

「セミナー後、数日後に、また吸いたくなった。だけど、実際に吸うとタバコが不味く感じられて、すぐにタバコを捨ててしまった。それ以後、吸うことはなくなった」
という人がいました。

ほぼ全員が禁煙に成功しているようでした。
中には、喫煙を再開してしまう残念な人もいるようです。

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