観察、振り返り

第5章

「観察」「振り返り」について、考えていきたいと思います。

ここでの問題は、「正しく観察できない」「正しく振り返りができない」です。

エアコンの例で言うと、

・温度センサの故障で、いつも実際の室温よりも5℃も高い結果を得ていた。

・温度センサが故障していて、フィードバックが得られていなかった。

・温度を測っていたつもりが、実は湿度を測っていた。

というのでは、正しくフィードバックループを回すことはできません。

そんなことがないように、

「正しく観察する」「正しく振り返りをする」ためには、まず脳の機能について知っておく必要があります。

それでは、こちらをご覧ください。

********** 動画部(ここから) **********

「正しく観察する」「正しく振り返りをする」ために知っておくべき脳の機能について説明します。

ちなみに、昨日の夕飯は何を食べましたか?

あなたが真剣にこの動画をご覧になっていたならば、

今、私がした突然の質問に対して、脳が反応してしまったことと思います。

返事はしなかったにしても、昨日の夕飯で食べたモノや食事中の状況が思い浮かんでしまったのではないでしょうか。

これが、説明したかった脳の機能の一つです。

「脳は、質問をされると自動的に答えを探し始める」という機能です。

唐突な質問だったにも関わらず、私が質問したことで、あなたの脳は質問の答えを自動的に探し始めました。

このことを知っておくことは大切です。

少し話はズレますが、誰かとお話をしているときに、

話したい話題とは違う方向に話が逸れてしまうことがあります。

そんなとき、唐突でも良いので、あなたが話したい話題に関する質問をするのです。

相手の脳は、その質問に対する答えを自動的に探し始めます。

そうなれば、あなたが話したい話題に変えることができます。

話題の主導権を握れるようになるのです。

話を戻しますね。

「正しく観察する」「正しく振り返りをする」ために知っておくべき脳の機能についてでしたね。

また、実験をします。

この後にお見せする画像には、いろんな色、いろんな形の図形がたくさんあります。

いろんな事情があることを知っていますから、

同じ色の図形は同じ形をしています。

同じ形の図形は同じ色をしています。

それだけははっきりさせておきます。

たくさんある図形の中から、

この図形

を見つけて、いくつあるか数えてください。

制限時間は20秒です。

それでは、いきます。

よーい、スタート。

15秒前、10秒前、5,4,3,2,1

はい!

それでは、質問です。

先ほどの画像の中には、何種類の図形があったでしょうか?

そして、それぞれの図形はいくつあったでしょうか?

これ、答えられますか?

ちなみに答えは

〇〇

です。

いじわるな実験でしたが、説明したい脳の機能が良く分かる実験なのです。

質問されると、脳はその答えを自動的に探し始めるという機能がありました。

赤い丸を見つけて、いくつかるか数えてください、という質問をされたあなたの脳は、

赤い丸を探しました。

そのとき、あなたの目には他の図形も見えていたはずです。

見えていたけれど、今、数を数えるべき図形ではないので、意識の外に追い出してしまったのです。

要するに、目で見たものは脳で処理されるワケですが、

人間の目は、人間の脳は、見たいものしか見ていないということなのです。

もっと言うと、見たいようにしか見ないのです。

このことを知っていることはとても大切なことです。

私たちには、多かれ少なかれの「思い込み」「偏見」があります。

「この人はこういう人だ」

「こういうときには、こうなるものだ」

などの思い込みがあると、目の前で繰り広げられていることをありのままに認識することができなくなってしまいます。

また、モノの見方には人それぞれの「クセ」があります。

いつも同じようなモノの見方しかしていないのです。

同じようなモノの見方しかしていなければ、見えるモノも同じようなモノしか見えません。

ちょっとした変化にも気付けないことがあるのです。

********** 動画部(ここまで) **********

次に、「ありのままを見る」ということを考えてみます。

コップの写真

この写真を見て、あなたはどう思いますか?

1.コップに水が半分も入っている

2.コップに水が半分しか入っていない。

3.コップに水が半分入っている。

ポジティブ思考、ネガティブ思考という話の例として挙げられる喩えです。

1.がポジティブ思考、2.がネガティブ思考、などと言われます。

しかし、観察/振り返りで大事なのは、どちらでもありません。

観察/振り返りで大事なのは、ありのままに見ることです。

なので、ここでは3.が良いのです。

以前、こんなことがありました。

私が主催のセミナーでのことです。

終始、難しい顔をして話を聞いていた受講生がいました。

私は、それを見て、「理解できてないのかな」「退屈しているのかな」と思っていました。

セミナーの最後で、一人ひとり感想を話してもらう段になると、

その受講生は、とても良かったと言ってくださいました。

「終始、難しい顔をしていたけれど」と尋ねてみると、

「真剣に、そして、興味深く話を聞いていたので、そうなってしまったのかも」とおっしゃいました。

聞いてみなければ分からないモノですね。

このように、見た目だけで判断してしまうのも、ありのままを観察していないことになります。

見た目だけで判断するのではなく、相手に確認してみるというのも観察には必要なのです。

もちろん、相手に確認のしようがなく、見た目だけで判断しなければならないことがあるのもあります。

それでも、なるべくたくさんの情報を集めて、そこから判断するように心がけましょう。

そして、なるべくたくさんの情報を集めるということに関連するのですが、

見た目だけで判断しなければならないときでも、いろんな角度から見るように工夫することも必要です。

それでは、また質問です。

こんな物体はあるでしょうか?

1.ある方向から見ると三角形に見える

2.別の方向から見ると四角形に見える

3.また別の方向から見ると円に見える。

さぁ、どうでしょう?

そんな物体はないと思いますか?

では、こちらをご覧ください。

このような物体は存在します。

この物体を一方向からしか見なければ、この物体の本当の形を認識することはできません。

あなたが観察する状況も同じです。

さまざまな角度から見て、状況を正しく認識するようにしましょう。

以前、こんなことがありました。

あるクライアントの先生が

「Aさんがチームの中で浮いているんです」

とおっしゃるのです。

私は

「Aさんが浮いているのではなくて、他の人が全員浮いているんじゃないですか?」

と尋ねました。

どういうことかというと、

Aさんが、チームの他のメンバーと異質(考え方や行動が)であることは確かなのですが、

その先生は、少数派のAさんが浮いていると認識しました。

しかし、実際は、先生の意図を理解して、考え、行動しているのがAさんだけであり、

他の人は先生の意図していることが理解できずにいた、ということが分かりました。

正しく状況を見ないと、少数派だからというだけで、Aさんを悪者にしてしまうところでした。

指導すべきは、Aさん以外の人だったというオチです。

職場においては、スタッフの誰よりもあなたの方が、広い視野、多くの視点を持つことができる立場にいます。

スタッフからの不平・不満はスタッフの狭い視野、少ない視点からの問題提起のことが少なくありません。

そんなときに、あなたもスタッフの視野・視点だけで状況を観察していては、正しい判断はできません。

スタッフよりも、広い視野・多くの視点で観察するようにしてください。

そして、私は、おそらくあなたよりも広い視野・多くの視点でモノを見ることができます。

それは、ただそのような訓練をしてきたから、ということなだけなんですけどね。

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